インターネット口コミ時代の観光業~山梨県富士河口湖町ルポ《後編》~

 予約サイトとSNS投稿で海外へPR

大石公園 photo/t.furuya

ペンション・ウィークエンドシャッフルは、河口湖畔に四季の花々を咲かせる大石公園から約2㎞。ゲストラウンジの出窓から大きな富士山が望める。

オーナーの古屋哲平さん(39)は、6年間のカナダ留学から帰国、都内で勤務の後、地元に戻って11年前に開業。留学中に知り合った妻と二人で切り盛りしてきた。

ペンション・ウィークエンドシャッフル、タイからの宿泊客 photo/t.furuya

「2年もすると、夏休みと連休に集中する日本人客だけを向いていたのでは部屋が埋まらないことを痛感しました。それで、語学は私たち夫婦の強みだとは思っていたので、外国のお客さんを呼ぶことにしました」

「地元の人は、わぁ富士山綺麗、ってあまり思わない。海外から戻ってくるとよくわかります」

今ではもう外国人客がメインの宿だ。

Facebookのフォロワー4000人。閲覧世界一の旅行情報サイトのトリップアドバイザーの口コミもほとんどが外国人の投稿。

どのような取り組みをしてきたのだろうか。

古屋さん

バズマーケティング

「まずやったことは世界的な旅行予約サイトに登録することでした。ブッキングドットコム、エクスペディア、アゴダ。それから、四季折々の写真を撮影して投稿しました。今までそれほどネガティブな投稿ありませんでしたが、予約サイトからは『良くない投稿があっても感情的にならないで真摯に回答すべき』とアドバイスされています」

帰国後の外国からの投稿が多いブッキングドットコム

「カナダの大学では観光学を専攻していましたが、『口コミに勝る宣伝はない』って教わった。それをいかに引き起こすか、バズマーケティングってやつです」

あるキャンプ場の事例だが、旅行予約サイトにキャンプ場のバンガローを紹介したら、サイト側が英語版でBungalowと表記。帰国後の宿泊客に「あんなひどいとは思わなかった」と投稿されてしまった。欧米人にとってのBungalowは、ベランダが囲む平屋住宅で空調の整った宿泊棟。キャンプ場は投稿に対して丁寧に説明を返し、それからは英語表記をCabin(小屋)に書き換えてもらったという。

「富士山と季節」がテッパン

「Facebookは、まめに写真を投稿するようにしました。富士山と桜など、富士山と季節、っていうのがテッパン。いいね、がグンと上がります。でも一番効果があるのが、お客さんの承諾を得て、スナップ写真を投稿してタグ付けすること。このタグ付けで帰国した皆さんがシェアしてくれるのが大きい」

Facebookはもう若い人たちには下火だという評価もあるが、古屋さん曰く「台湾やタイの人たちの反応は今も変わらないし、若い人がターゲットではないですから」。

香港からの常連客と古屋さん photo/t.furuya

18言語対応のWEBサイトは、実はブッキングドットコムのサービスプランだという。制作費がかからないが予約に応じたコミッションがかかる。

「9割が予約サイトからの予約で、電話予約はほとんどありません。リピーターのお客様でも直接予約されない人が多い。お客さんにとっては便利にできているんでしょう」

今できること

4月。言うまでもなく、少し前から外国人客はゼロ。すべてキャンセルになっている。
古屋さんも「今は何もできることはない」と諦めていたある日のこと。
東京より数週間遅れの桜が満開で、季節外れの雪が降った。

久しぶりに手にした一眼レフで「富士山と桜と雪」を湖畔で撮って、Facebookに投稿するとタイのバンコクからこんなコメントが。

Wow thank you for posting these amazing photos.
We miss Japan so much. Will be there again. Stay safe.

この投稿「いいね574、コメント24、シェア163」(2020年4月17日時点)。

「また行きたい」のコメントだ嬉しい

「キャンセルされたお客さんが、私の投稿を見て来年は行きたいと思ってくれたことを知った。今できることがあると思いました」

観光連盟の堀内さんに聞いた「天空の鳥居」のことを聞いてみた。

もっと人気が出そうな「天空の鳥居」 photo/t.furuya

「あれは僕も少し加担していると思っていて、鳥居が出来る前から、少し先にある『母の白滝』までたびたびお客さんを案内していました。その途中の景色です。誰が『天空の鳥居』と名付けたかは知りませんけど。観光が再開したら一気に人が集まりそうです」

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4月16日、新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が全国拡大された。

都心から海や山の観光地などへ避難するかのように移動する人たちへの行動が問題視されている。

「すべてキャンセル」のペンションがある一方、西湖湖畔の紅葉台キャンプ場には、宿泊予約を希望する電話は止まず、オーナーの三浦さんは数えきれないぐらい断ったという。

富士河口湖町観光連盟の事務所には会員施設へ届けるマスクの箱が積まれていた。

「2月から消毒液の配布など約400軒の会員施設への感染対策に忙殺されています。今は山下会長の人脈でなんとか手に入れたマスクを届けているところです」(堀内さん)

前編はこちら

トリップアドバイザーの「外国人に人気の観光スポット ランキング2019」(2019年7月12日公開)の1位は京都伏見稲荷神社。筆者が見た時点の口コミは24,400件で日々更新されているようだ。
2位の広島原爆ドームの口コミ6,949件、3位宮島4,803件、4位奈良東大寺6,616件、5位箱根彫刻の森美術館2,576件。
河口湖は18位に登場、2,277件の口コミ。世界に名高い「富士山」の河口湖のこの順位は正直意外だった。
バズマーケティングの成果は、口コミ数やフォロワー数としても可視化される時代。
でも取材して感じたのは、観光業に携わる人たちの地道な活動。運任せの口コミを頼りにはできない。

取材・文/福田知孝(wepRESS編集部)

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