「新しい生活様式」へ
飲食店の新たな顧客との向き合い方 前編

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために政府や自治体が発令した「外出自粛要請」は地域経済に大きな打撃を与え、中でも飲食店への影響は甚大だ。

しかし経営者や彼らを支える人々は従来のサービスを見直すとともに、ネットや宅配代行サービスなど新たなツールも積極的に利用。新しい時代を生き抜くための活路を見出したのだろうか。さいたま市内の飲食業の取り組みを紹介しよう。

発案から1週間で公開した飲食店情報サイト

4月6日、公益社団法人さいたま観光国際協会はデリバリーやテイクアウトなどを取り扱う飲食店の情報を集めたWebサイト、「#StayHomeさいたま」を開設。発信を始めた。

「飲食業はお客様の外出の足が鈍れば、直に売り上げに響きます。家にいる方とお店をつなぐために、何かできることはないかと考えスタートしました。発案から立ち上げまで1週間もかかっていません。とにかく動き出そうとの思いでした」

同協会で観光事業課長を務める大和田昌宏さんはきっかけをこう話す。

当初は協会の会員向けサービスの位置づけだったが、現況を打破するにはそこに捕らわれないほうがいいと会員以外にも門戸を広げた。掲載を希望する店舗をSNSで呼びかけたところ、手が多く上がり、一気に情報が集まった。また取り組みがNHKで取り上げられたことも拍車をかけた。

「他の自治体では洋食、和食などのカテゴリーごとにお店を検索できるサイトを作っているところもありますので、私たちの取り組みもまだまだです。ただ“よく行く店が載っていて嬉しい”、“新しいお店を発見できてよかった“というお客様からの声も届いており、一定の効果はあったと手ごたえも感じています」

「#StayHomeさいたま」には、5月半ばまでに予想を大きく上回る10万ページビューが集まった。今後、コロナウイルスの余波と自粛要請の動きがどうなるか定かではない。しかし当面の間はサイトの運営を継続していきたいと大和田さんは話す。

味の変化の確認など、試行錯誤のテイクアウトメニュー

北区の「松栄庵」は手打ちのそばとうどん、揚げたて天ぷらが売りのお店。今回の外出自粛要請を受け、テイクアウトのメニューを拡大した。

「今までやっていなかった商品を考えたり、値段を手ごろにしたりとお客様に買いに来ていただけるにはどうすればいいかと知恵を絞りました。器を持参していただくと100円引きにもしています」

店を切り盛りする秋山春佳さんは話す。

新しいメニューの開発の際には試作を繰り返した。30分後の味はどう変わるか、3時間後に電子レンジで温めなおしても大丈夫かなど、試行錯誤の末に作ったテイクアウト限定メニューは好評を博している。また手作りの看板もパソコンで自作し、店先に出した。

「家族経営でやっていてウェブでの集客まで手が回らなかったので、『#StayHomeさいたま』には助かりました。また看板も目を引いたようで、それを見た新しいお客様に来ていただけるようになりました」

麺類やてんぷらの店だけに、夏には夏の、冬には冬の季節のメニューが展開できるのが強みと秋山さん。現在の状況が収束しても、テイクアウトは続けていきたい考えだ。

クレームは配達員ではなく店に来る

大宮区の「大分中津からあげ ぶんごや大宮店」ではコロナ禍以前から宅配代行サービス「Uber Eats」を導入している。

「飲食店は待つだけではなく、攻めの仕事もやらないと厳しいと考え、1年以上前から始めています。今回の自粛要請期間中には利用していただくお客様が増えましたので、やっていてよかったです」

そう話すのはオーナーの原田直樹さん。店員ではなく外部の配達員が届けるシステムのため、客との接点はないが、商品を入れる袋に手書きのメッセージを添えるなど感謝の気持ちを伝える工夫もしている。

だが今のところ、Uber Eatsでの提供は唐揚げとお弁当のみ。以前はイートインで提供するスパゲティなども配達していたが、今は取りやめている。

「配達員が店に来るまで、そして店からお客様に届けるまでの間で道に迷うことがあり、料理が冷めてしまったり、また配達中に形が崩れてしまうケースがあったのです。お客様のクレームは配達員ではなく店に来ますので、仕方なくの決断でした」

とはいえスタッフの人員も限られるため、自分たちで配達員を準備しないで済む点は助かっている。今後も利用していく考えだが、「配達員のクオリティが上がる研修などがあるともっといい」と注文も促す。

他にはチラシを作成し、テイクアウトの客に配布。オフィス内に貼ってもらったり、知り合いに配ってもらったりなど地上戦にも力を入れた。

「ネットの評価も重要ですが、半径数キロの範囲で商売をしている私たちは実際の口コミが売り上げやリピートに直結します。こんな情勢ですが、対面でのコミュニケーションを大切にしたいと考えています」

苦しい時こそ、いかに信用を維持し、高めていくかを考えなければならないと原田さんは力説する。

◇取材・文/赤浦 和

後編へつづく


 

●取材にご協力いただいた、さいたま市内のお店

手打ちそば・手打ちうどん・揚げたて天ぷら
松栄庵

からあげ・洋食
大分中津からあげ ぶんごや大宮店

うどん・ハンバーグ
武州うどんあかねandみどりダイニング

カフェ
クロブチカフェ

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